第四場

 舞台再び店内。照明入ると、アンサンブルダンサー達板着き。音楽が流れて来る。

 ここのナンバーは、黒人女性であるレディと、白人の女性ダンサー(仮・リズ)の対立を見せたい。

 グループを、二つに分けてのナンバーに出来ないか。

 男性ダンサーも参加して居る。(この時ボーイをリズのグループに入れたい。)

 音楽ダンス決まる。アンサンブル客の中に散って行く。

 ボーイが客の近くに行くと彼に対する反応がある(チップを渡されるとか、握手を求められるなど)

 リズが、ボーイに話しかける。


リズ     「ボーイよね、初めてにしてはステキだったわ。どうその気があれば、オーナーに話して。

             私と組んでやってみない、貴方なら良い線いけると思うわ。」

ボーイ    「ありがとう。」


 ボーイ上の空でしっかり話を聞いていない。レディの姿を追って居る。


リズ     「ボーイ聞いてる!!」

ボーイ    「……。」


 リズ呆れたふうで、その場から離れる。

 オーナーがボーイを呼ぶ。


オーナー  「ボーイ話がある、ちょっと来てくれないか。」


 オーナー第二舞台に、ボーイもそれに続く。


オーナー  「ボーイ、なかなか評判がいいじゃないか。」

ボーイ   「ありがとうございます。」

オーナー  「さっきリズが、君を誘っていたようだが?!」

ボーイ   「はい。一緒にやらないかって!!」

オーナー  「その気はあるのかな?!」

ボーイ   「オーナー。確かに彼女も素晴らしいと思うのですが…。」

オーナー  「リズでは、嫌だと…?!」

ボーイ   「いえ。唯僕に我がままを言わせて頂けるのなら。」

オーナー  「……。」

ボーイ   「レディと一緒にやって見たいんです。」

オーナー  「レディと…?」

ボーイ   「はい。レディには僕に無い物があります。肌の色じゃない。しなやかさや、気高さ、そして彼女の熱さ…。」

オーナー  「良いだろう。レディとパートナーを組む事を認めよう。」

ボーイ   「エッ!!」

オーナー  「レディが承知した上で、君達に次ぎのメインをやって貰う。」

ボーイ   「メインって。パートナーとして組ませて貰えるだけじゃないんですか。」

オーナー  「私が本気じゃないと…。」

ボーイ   「ありがとうございます。」


 オーナー上手に呼び掛けて。


オーナー  「誰か…。レディに来るように伝えてくれ。」


 第一舞台で、アンサンブルの一人が動いて、レディに耳打ち。


レディ   「わかった…。」


 レディ第一舞台を退場して。第二舞台に。


オーナー  「来たか…。今度のナンバーから、お前とパートナーを組んでもらう。そして二人がそこのメインだ。」

レディ   「ボーイと…?!」

オーナー  「不服か…?!」

レディ   「いいわ、わかった…。」

ボーイ   「よろしく…。」


 第一舞台が急に騒がしくなる。ピアノ弾きが戻って来たのだ。

 疲れて薄汚れた感じで、ピアノの足にもたれるように座り込む。


ピアノ弾き 「ジェイ(オーナーの事。無意識に昔の呼び名で呼ぶ)レディ…。何処だ…。もう嫌だ一人にしないでくれ。」


 第一舞台の騒ぎを聞き付けて。オーナー レディ ボーイが、第二舞台から、第一舞台へ。


オーナー  「戻ったのか…。」

ピアノ弾き 「ジェイ…。助けてくれ。苦しいんだ。土が、息が出来ない。真っ暗で何も見えない。

           聞こえるんだ、砲弾の音が…。あいつが…。あの男が笑ってる。怖いたまらなく怖いんだ…。

           これ以上一人は嫌だ…。」

オーナー  「デック(ピアノ弾きの事。同じく無意識に昔の呼び名で呼ぶ)。」


 ピアノ弾き、オーナーに助けを求めてすがりついて行く。

 オーナー抱き留めるようにしながらも、彼自身もピアノ弾きの言葉に動揺し引き摺られるように恐怖を感じていた。


レディ   「ピアノ弾き。しっかりしなさいよ。」


 恐怖感で立ちすくむオーナーと入れ替わるように、ピアノ弾きを自分の方を向かせてから平手打ち。


レディ   「仕事は終わったんでしょ。」


 ピアノ弾き何とか正気に帰る。


ピアノ弾き 「レディ…。」

レディ   「酷いざまね…。何時もより戻って来が早い…。」

ピアノ弾き 「今夜。部屋に行っても良いか。」

レディ   「良いわよ…。どうせ一人じゃ眠れないって言うんでしょ。」

ピアノ弾き 「暗闇は嫌だ…。明りを…。」

レディ   「点けておけって言うのね…。何時もの事じゃない…。」

オーナー  「ピアノ弾き。奥へ行こう少し休め。」


 オーナー、何とか正気をたもった感じ。


オーナー  「ボーイ。さっきの話。また後でつめよう。」


 オーナーとレディ。ピアノ弾きを支えるように上手退場。

 ボーイはピアノ弾きに何が起こったのか。現在の状況が飲み込めない。

 店の者、客も含めて。彼等は大体理解して居るので、無関係で居ようと努めて居る。

 ボーイのみ舞台に残して、カーテン閉まる。

   第五場

 暗幕。カーテン前。


ボーイ   「何だ。一体何があったと言うんだ…。ピアノ弾きが店を出てから…。三日?四日?

            いや一週間はたつんだろうか…?彼は一体どんな仕事をしていると言うんだ。

            オーナーは…。レディも、あの状態の彼をまるで当たり前のように受け入れて居る。

      他の連中は知らん顔だ。もしかしたら…?(答えに行き着く、しかし否定)いや、そんなはずは無い。」

ボーイ   「レディの部屋へ行くと行っていたな。そう、そうだよな、二人がそういう仲だって不思議な

      ことじゃない。むしろ考えもしなかった、僕が馬鹿なんだ。でも…。何故こんなに苛立つんだ、

      チリチリと心が体の中が焼けるようだ。」


 ボーイの中に芽生え始めた嫉妬心。しかし、わずかに残るピアノ弾きへの好感がそれを認めたがらなかった。

 ボーイを呼び止める声が聞こえて来る。効果音として足音とか有っても良いかも、街路上と考える。

 スポットライトが、懐中電灯の役割をしている。


警官    「失礼、警察だ。君は何処から来て、何処へ行こうとしているんだ。」

ボーイ   「何なんですか。突然に、僕はそこの店で、バーテンボーイをして居ます。店が終わって家に戻るところです。

           何かあったんですか。」

警官    「殺しだよ。珍しくもないがね。一週間程前に、この先の路上で監察官が殺されたのさ、

      ナイフで腹を刺されてね。唯その時の状況から判断して、銃撃があったことも確認されているが、

      拳銃は殺された男のものしかなかった。」

ボーイ   「ナイフはどうなんです…。」

警官    「無かった。犯人が持ち去ったんだろう。それで目撃者と容疑者を探して居るのだ。心当たりはないかな…?」

ボーイ   「……。いいえ別に…。」

警官    「それじゃ君は、その日何処に居たかな。」

ボーイ   「僕がやったと言うんですか…?」

警官    「参考までにね…。」

ボーイ   「店に居たと思います。店の皆が証言してくれますよ。」

警官    「ありがとう。」

ボーイ   「その殺された監察官って、評判の悪い男だったんじゃないでしょうか。」

警官    「そうだ。遅かれ早かれ、こうなる運命だったのかもな…。」

ボーイ   「……。」


 スボットライト弱まる。去って行く足音が聞こえる。警官が立ち去った事がわかる。


ボーイ   「あの男だ。ならやっぱり…。」


 静かに照明、フェイドアウト。暗転。





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